映画『劇場版少女⭐︎歌劇レヴュースタァライト』の感想と考察①の続きです。
!!注意
以下の内容は映画『劇場版少女⭐︎歌劇レヴュースタァライト』のネタバレを含みます。
未鑑賞の方はご注意ください
怨みのレヴュー (石動双葉と花柳香子)
レヴュー曲:わがままハイウェイ
『怨みのレヴュー』なんて物騒なレヴュー名だけど、実際は双葉と香子の痴話喧嘩だった。でもそれが最高。
幼少期からずっと一緒の双葉と香子。双葉は世話焼きで香子は甘えん坊さん。
香子は日本舞踊の家元の子で、双葉は香子が「ずっとうちのこと見ててな。」と言えば香子が舞台に立つ時には誰よりもそばにいるし、「ウチ、聖翔音楽学園に行くから双葉はんも一緒にくるんやで」と言えば一緒に入学した。
卒業後、香子は千華流を継ぐから双葉も当然一緒に京都に帰ってくると思ってたんだろうね。当たり前のように。
でも、双葉は新国立に行くことを決めてた。香子に何一つ相談せずに。しかも西條クロディーヌっていう自分とは別の女に勧められたのがきっかけで。
ずっとそばにいた双葉が自分から離れていく。しかも他の女がきっかけで、そのことを他の女から聞いて。
こんなこと、香子からしたら縁切りに等しいんだよね。
劇場版の序盤で香子があのオーディションの話を持ち出して、「しょーもな」って部屋を飛び出した先に西條クロディーヌがいたの、香子にはなかなかキツかったと思う。香子にとって西條クロディーヌは双葉を変えた大きな要因だし、TVアニメでも双葉が香子に内緒でクロと特訓してたことがあったから余計に。
本当はあの時に「全部、全部あんたのせいや…!!」て言いたかったんだろうけどそれを飲み込んで、その場でそれを言いそうになった「ウチが1番しょーもな……」になったんじゃないかな。
だからこのレヴューの最初に西條クロディーヌにそれを言った。
レヴュー中だからたぶんもうちょっと言いたいことはあったのかもしれないけど、双葉の謎ポーズ乱入で二人の感情ぶつけ合いレヴューに発展。
これには西條クロディーヌさんもやれやれせざるを得ない。
双葉がなんとか弁明しようといろいろ言ってるんだけど舞台セットは突然セクシー本堂に。
(セクシー本堂って何)
そして香子は双葉になんで新国立に行くことを自分に言わなかったのか聞く。
双葉は反対されると思ったって返す。
香子は「うちはそんなこと言わない」とも「反対するに決まってるやろ」とも言わない。
このあと双葉は「星見は〜」だの「天堂は〜」だの他の女の名前を次々に出してくる。
双葉は「他の人たちのキラめきを見て自分も挑戦したいと思った。」みたいなことを言いたかったんだろうけど、香子には正当化した言い訳にしか聞こえないのよ。だから聞いてみたわけよ。
「本当は鬱陶しなったんやろ、なぁ?」
この台詞、自分でも普段双葉に対して甘えまくってた自分を自覚してたからこそ出てきた台詞だと思うんだよね。本当はたぶんずっと聞きたかったけど今まで言えなかった。
香子が双葉に聞いたことに対する答えって存在しないんじゃないかな。正確には香子が欲しい正解の言葉なんてないんだと思う。
仮に双葉が新国立に行くって相談しても香子は双葉の予想通り反対しただろうし、「本当は鬱陶しなったんやろ?」に対してはYesNoどっちを答えても香子は納得しなかったと思う。
そう、香子はめんどくさい女なんですよ。そこが彼女の魅力の一つでもあるんだけど。
セクシー本堂パートは酒でも飲んでないとこんなのやってらんねーわって気持ちの演出に見える。
(だからセクシー本堂って何?)
何も答えられない双葉。
それを予想したかのようにすぐさま「表出ろや」と言ってまた舞台セットが変わり……
突然のデコトラ!!!
清水の舞台にデコトラ6台!!!!!!
た、楽し〜〜〜〜い!!!
ここでレヴュー曲『わがままハイウェイ』もアップテンポなシティポップ調に変わり、感情のぶつけ合いがスタート。
曲の歌詞とメロディーと殺陣で二人の感情がこっちにもガンガン伝わってきて、でも楽しくて。
いや、ここは本当に楽しかった。
鑑賞3回目くらいから楽しすぎて泣いてたもん、私。(笑)
ここで双葉が「駄菓子が食べたいと言えば買った」「朝起きられないって言うからバイクの免許も取った」とか“お前のためにした”感を出して「だから自分もわがまま言っていいだろ」って香子に言うんだけど、香子からしたら「そんなもん知らん」なんだよね。
確かに双葉は香子を思ってした行動だけど、香子からしたら頼んでない、双葉が勝手にやったこと。なわけ。でもその気持ちには気づいてたし感謝はしてる。でも今はそんな話をしてるんじゃない。
お互いいろんな感情を吐き出してて中身がまぁめんどくさい。でもとにかく相手に感情をぶつける。
そしてデコトラ激突フィニッシュ!かと思われた時に香子からの「ウチらホンマ、しょーもな。」
そう。この二人しょーもないんですよ。本当。
だから感情をお互いにぶつけるだけぶつけてスッキリして、双葉は気持ちを整理して本当に伝えたかったことを言う。
そして「待っていてくれ。」と
卒業後は離れてしまうけど、縁切りではない。私は私の意思でお前の隣に立てるようになるために新国立に行く。必ずまたお前の隣に立つから待っていてくれ。
そんな想いがビシビシ伝わってくるんですよ……
バイクのキーを香子の左手薬指に通したことによって
びっっっっっっくりした。
女性の左手薬指に約束事を言いながら自分たちを繋ぎ止めてくれる物を通すんですよ。
つまり……そういうこと………に見えるわけよ。
個人的にふたかおは好きなんだけど、えっ公式でここまでしてくれちゃうの!???って動揺した。
これに対する香子の答えが「待ってるで」でも「嫌や」でもなくて
「ガキのわがままには勝てんわ……」
オタク的に100点満点の返事です。スタンディングオーベーション。拍手喝采。ありがとうございます。
しゃーないから自分が折れた、みたいな言い方だけど香子が双葉から1番言って欲しかった言葉なんじゃないかな。憑き物が落ちたみたいに良い表情だった。
そして双葉は香子の上掛けを取ってレヴュー終了。
総合的に見ると、最初にも言ったように二人の痴話喧嘩なんだけど、この二人にとっては今後の将来に影響する意味のあるレヴューだったなと思った。
でも今後もまた寄り添って、高めあって、しょーもないことで喧嘩してを繰り返していってほしいですね。
競演のレヴュー (神楽ひかりと露崎まひる)
レヴュー曲:Medal Suzudal Panic◎○●
愛城華恋を探すためにワイルドスク———ンバロックに参加した神楽ひかり。
電車を降りて向かった先にいたのは、たくさんのスズダルキャットを率いた露崎まひる。
舞台セットはオリンピックを思わせるような競技会場。
神楽ひかりは戸惑いながらも露崎まひるに愛城華恋はどこだと問う。
でも露崎まひるはやっとひかりちゃんと舞台の上に立てる。と見当違いなことを言う。
もう一度同じことを聞いても返ってくる台詞は同じ。
神楽ひかりは自分の意思でワイルドスクリ———ンバロックに参加したわけだからここが既に舞台の上であることはわかってたはず。
でも、演者として対応できなかったのは、神楽ひかりが舞台に立つ目的が“愛城華恋“だったからで、露崎まひるとレヴューしている場合じゃない。それを露崎まひるなら理解してくれる。そう思ったんだろうね。でも露崎まひるはそんなのお構いなしに演技を続ける。
神楽ひかりが困惑する中で私たちはライバルよ、と露崎まひるの開会宣言。ここで自身の口上を発する。TVアニメの時のオドオドしてた彼女はいったいどこへ…ってくらい彼女はとても頼もしくなっていた。
露崎まひるが放つピストル音を皮切りにレヴュースタート。
レヴュー曲のリズムに合わせて二人がハードル走やシンクロ、走り高跳びなどの競技をして競い合う演出。レヴュー曲もTVアニメの露崎まひる回に似たような可愛らしい曲調。
見ていてワクワクしたし、楽しかった。
ここまでは。
あっさり上掛けを取られてしまう神楽ひかり。
今までのオーディション通りだったらそれでレヴュー終了。でも今回は違う。
神楽ひかりの演技に納得できない露崎まひる。
「もっとちゃんと演じてよ…」
「もっと感情込めてよ…」
「もっと本物の台詞を…」
そして、
「大っ嫌いだったの、神楽ひかり。」
この台詞を聞けた時、正直めちゃくちゃワクワクした。嬉しかった。
TVアニメで華恋とまひるのレヴューは見られたけど、ひかりとまひるのレヴューはなかったんだよね。華恋とまひるは親友で、華恋の世話を焼いていたまひる。
神楽ひかりが転校してきたことによって華恋の舞台に対する意識が変わったように見えたまひるは華恋に対してその感情をぶつけたけど、華恋を変えてしまった原因のひかりに対してはTVアニメでは特に何もなかった。
TVアニメの時は正直、ひかりvsまひるはないのか〜華恋の言葉があってもまひるのひかりに対する感情は消化しきれてないのでは…?と思ってたから劇場版でそれをやってくれて素直に嬉しかった。
露崎まひるの本音とも受け取れる台詞に畏怖する神楽ひかり。
舞台の上から逃げ出すもまひるに追い詰められる。
エレベーターに乗って逃げ切ったように見えても、そこもまひるの舞台装置だったの演出、めちゃくちゃホラーだった。シンプルに怖かった。一瞬違う映画見てるのかと思ったもん。
「どうして逃げたの?」
「 “私がいると華恋が甘えちゃう“ から?」
この台詞の息遣い、込まれた感情にゾッとした。岩田陽葵さん(露崎まひるのcv)の演技力すげー。
タワーの上でひかりの胸ぐらを掴むまひる。
おいおいこれ本当に少女たちがメインの物語か!?という気持ちと、クソデカ感情をガンガンにぶつけてるの最高〜!という気持ちとでゾクゾクが止まらない。
そして絶叫しながらタワーから落ちるひかり。いや怖すぎだって。
その下には大きなミスターホワイトのクッション。そのど真ん中にぽすっと落ちるひかり。
えっミスターホワイトの顔面デカクッション可愛い……神楽ひかりが落ちたことによって顔面がちょっと歪んでて更に可愛い……
なんて思ってると神楽ひかりがうずくまりながら涙の告白。
「華恋から逃げてごめんなさい……」
「怖かったの……華恋のファンになってしまうことが……」
これを聞いた時、TVアニメでは読み取りきれなかった神楽ひかりへの解像度が一気に上がった。
何故、彼女が舞台少女になったのかがここから少しずつ明らかになってきます。
(ここについては後記事で書きます。)
神楽ひかりから台詞を引き出し、「私も怖かったよ。」と続ける露崎まひる。
こう答えられる露崎まひるさん…もしかして九十九組の中で1番メンタル強いのでは……?
TVアニメで周りのキラめきに圧倒されて自分のキラめきを見失っちゃったけど、愛城華恋の言葉で気持ちを立て直して「決めたから、舞台の上で生きていくって。」と自分の未来につき進んでかつ、“ライバル“である神楽ひかりの背中を押すためにまだ自分は下手くそだけどと言いつつ堂々と舞台の上に立つ露崎まひるさん………かっこいい……
神楽ひかりに金メダルをかけ、
「行け!神楽ひかり。」
ここもね、号泣ポイントですよ。レヴュー曲の歌詞が更に舞台を引き立たせていてね……
これ、1年前の露崎まひるだったらきっと言えてなかったんだろうな……
TVアニメでは「華恋ちゃん華恋ちゃん」って言いまくってた子が劇場版では………あれ?もしかして一回も言ってないんじゃ………やっぱこの子メンタル強いよ。
そして、神楽ひかりは愛城華恋との舞台へと向かう。
「まひる、すっごく怖かった!本物の舞台女優みたいだった!」
…見た側からしたら“大嫌いだった”のパートは演技ではなく本音だったのでは……と思いつつ、ひかりがそう受け取ったのならまぁ……良いのかな(笑)。
ここでもう一度露崎まひるが自身の口上を発してレヴュー終了。
「夢咲く舞台に、輝け 私」
劇場版で口上を2回言うのは露崎まひるだけなんですけど、1回目と2回目で全く違う印象を受けたんですよね……涙が止まりませんでした。
露崎まひるさん…とんでもない舞台女優になりますよこれは……
総括
いや情報量(笑)
これ、まだ劇場版の半分くらいまでの感想なんだよね……そりゃTVアニメ履修済みでも初見は混乱するわ。